知らないと危ない!会社が整備すべき「人事労務の帳票」

「帳票は揃っているつもりだけど、これって本当に法的に大丈夫?」
「クラウド勤怠に任せっきりで、紙の出勤簿は不要?」

そんな声をよく耳にします。

実は、労働基準法などで会社が作成・保存すべき帳票(記録)は明確に定められています。

不備があると、労働基準監督署の調査で是正勧告や指導の対象になることも

このコラムでは、会社が備えておくべき基本的な帳票と、保管義務、注意点についてご紹介します。

労働基準法で義務づけれている「法定帳簿」とは?

法定帳簿は、事業場ごとに作成と保存を行うことが必要です。
事業場とは、労働安全衛生法が適用される単位であり、「同じ場所で相関連する組織のもとに継続的な作業をする場所」を指すとされます。

具体的な例としては、次のような場所が挙げられます。
・本店・本社
・支店・支社
・事務所
・工場
・店舗

原則として、同じ場所に存在すれば、1つの事業場とみなされます。
しかし、工場内の医務室や食堂のように、労働の状態や業態が著しく異なる場合には、各々が別個の事業場とみなされることに注意が必要です。

また、離れた場所にあれば、原則として別個の事業場とみなされます。
しかし、規模が小さく、独立した組織と見ることが困難な場合には、直近上位の組織と一括して1つの事業場として取り扱われます。

1.労働者名簿

労働者名簿は、労働基準法第107条により、作成が義務付けられている帳簿です。
事業場ごとに作成し、その記載内容に変更があった場合には、遅滞なく訂正しなければなりません。

労働者名簿に記載すべき内容は、次の通りです。
・氏名
・生年月日
・履歴
・性別
・住所
・従事する業務の種類
・雇い入れの年月日
・退職の年月日及びその事由(解雇の場合にあってはその理由含む)
・死亡の年月日及びその原因

社員名簿や従業員名簿との違い

労働者名簿の他に、社員名簿や従業員名簿といった名称の帳簿を見かけることがあります。これらは、労働者名簿とは、異なった帳簿なのでしょうか。

結論からいえば、労働者名簿と社員名簿や従業員名簿に内容の違いはありません。名称が異なっているだけで、全て同じ内容の法定帳簿を指しています。

社員台帳といった名称もありますが、こちらも同様です。そのため、法定の記載事項に漏れがなければ、いずれの名称を用いても問題ないことになります。

2.出勤簿

出勤簿は、労働者名簿や賃金台帳と並び、法定帳簿の1つとして挙げられています。しかし、労働者名簿や賃金台帳と異なり、労働基準法に、出勤簿の作成を義務付ける直接の規定はありません。

では、出勤簿の作成が義務付けられていないのかといえば、そうではありません。直接の規定こそありませんが、出勤簿も労働基準法第109条に定められる「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として保存が義務付けられています。

出勤簿に記載すべき事項は法律の規定はありませんが、次の事項を記載するとよいでしょう。

・出勤日及び労働日数
・始業・終業の時刻及び休憩時間
・日別の労働時間数
・時間外労働を行った日付、時刻、時間数
・休日労働を行った日付、時刻、時間数

出勤日数や労働時間数を記載するだけでは、それが通常の労働時間か時間外、休日、深夜のいずれに該当するか把握することは困難です。そのため、出勤簿には、労働時間の種類ごとの日付や時間数などを具体的に記載することによって、労働時間の正確な把握を行っています。

3.賃金台帳

賃金台帳は、労働基準法第108条により、作成が義務付けられている帳簿で、事業場単位での作成が必要なことは、労働者名簿と同様です。賃金計算の基礎となる事項や、賃金の額などを賃金支払の都度遅滞なく記入します。

賃金台帳に記載すべき事項は、次の通りです。
・氏名
・性別
・賃金計算期間
・労働日数・労働時間
・時間外労働時間数
・休日労働時間数
・深夜労働時間数
・基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
・賃金控除した場合にはその項目と控除額

労働時間や時間外労働時間、休日労働時間など、賃金計算に当たって必要となる事項の記載が必要となります。
しかし、始業・終業の時刻や、休憩時間まで記載する必要はありません。

4.年次有給休暇管理簿

平成31年4月から追加された帳簿です。
「年次有給休暇は付与しているけど、作成義務は知らなかった」というご意見をいただきます。

記載すべき事項は次の通りです(労働者ごとに作成します)
・取得日
・付与日
・日数(残日数含む)

いつ付与したか、いつ取得したかなどの情報ですので、Excelにまとめることで作成できますが、上記2出勤簿とも関連のある情報ですので、一体で管理できる勤怠管理システムの導入をお勧めします。

保存期間はいつまで?

法定帳簿には、作成だけでなく保存の義務もあり、保存期間も定められています。
法定帳簿は、労働基準法第109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として、5年間(当分の間は3年間)の保存が必要です。

保存における帳簿ごとの起算日は、次の通りです。また、記入や完結等した日より当該記録に係る賃金の支払期日が遅い場合は、その支払期日が起算日となります。

・労働者名簿
 労働者の死亡、退職又は解雇の日
・出勤簿
 その処理が完結した日(労働者が最後に出勤をした日)
・賃金台帳
 最後の記入をした日(労働者の最後の賃金について記入した日)
・年次有給休暇管理簿
 有給休暇を付与した期間の満了後

また、法定帳簿(年次有給休暇管理簿は除く)の作成義務や保存義務に違反した場合には、労働基準法第120条による罰則も予定されています。
罰則の内容は、30万円以下の罰金となっており、罰則を受けないように、しっかりと作成保存することが必要です。

その他の整備しておきたい実務帳簿

法定帳簿に加え、日々の人事・労務管理を行う上で以下の帳票も整備しておくと安心です。

帳票名内容・用途
雇用契約書・労働条件通知書雇入時に交付義務あり。契約内容のトラブル防止に不可欠
就業規則常時10人以上の事業場では届出義務。周知が重要
36協定書(時間外・休日労働に関する協定届)残業を命じるには必須。労基署への届出が必要
産業医・衛生委員会記録常時50人以上の事業場で必要。報告書や議事録を保存
安全衛生管理体制図組織図・責任者体制を明示。労働災害対策の一環として重要

よくあるご相談・トラブル事例

・「給与計算ソフトにデータがあるけど、賃金台帳として出せない形式だった…」
・「従業員名簿がExcelバラバラで一元管理できていない」
・「出退勤は打刻してるが、月単位の出勤簿が整備されていない」
・「年休管理簿が手書き台帳のままで集計できない」

従業員が10名程度であれば、Excelでの管理でも容易ですが、「今後従業員が増えそう」という場合は、人事労務システムの導入が必要です

「Excelであれば無料でできるのに、わざわざ費用を払ってまでもシステムを導入すべきか」とのお声をいただくことがありますが、日々の小さな手間をなくすこと、いつでも正しい情報を確認できることが労務管理において重要なことだと思います。

「人数が増えてから導入を考える」ではなく、「少ない人数のときから安定したシステム運用ができる」ことを目指しましょう。

社会保険労務士にご相談ください

「帳票」は、人事の基盤であり、労務リスクから会社を守る盾でもあります。
日々の忙しさの中で後回しになりがちですが、“何を・いつまで・どう管理するか”を把握しておくだけでも、トラブルの芽を減らすことができます。

社会保険労務士事務所ベイプラスでは、帳票の整備状況の点検、電子化に向けた人事労務システムの導入支援も行っております。
「この帳票で大丈夫?」と不安を感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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