人事担当者が今すぐできる!「ペーパーレス化」の第一歩 〜紙の申請書から卒業しよう〜
「昔ながらのやり方がいちばん確実だ」
「紙で残しておけば、いざという時にも安心」
―それは決して間違っていません。紙運用には「記録が残る」「誰でも使える」「見ればわかる」といったメリットがあり、長年そうした信頼に支えられてきました。
しかし、職員の働き方が多様化するなかで、「紙の強み」が「紙の負担」に変わってきているのも事実です。
・記入ミスが多く、修正に手間がかかる
・届出が回覧の途中で止まり、処理が遅れる
・ファイリングや保存スペースが限界
こうした悩みを抱える現場は、今や少なくありません。
「昔と違って今は便利なツールがある。使えるものは使って、現場の負担を減らしたい」
そう考えることも、現場を守る責任ある選択のひとつではないでしょうか。
このコラムでは、人事部門の現場に無理なくフィットする「ペーパーレス化の第一歩」として、実際の取り組み方やシステム導入の考え方をご紹介します。
「時代に合わせて、できるところから少しずつ」
―そんなスタンスで、紙文化との“いい距離の取り方”を一緒に考えてみませんか?
紙が多すぎる!?人事業務の現状
人事部門でいまだに紙ベースの業務が残っている代表例
- 身上異動届(住所・氏名変更など)
- 年次有給休暇の申請・承認
- 出産・育児・介護関連の届出
- 雇用契約書の交付・署名
- 勤怠打刻表の紙出力・押印
- 評価シートの配布・回収
紙を使い続けることでの課題
- 印刷・保管・郵送などのコスト負担
- 承認経路が不透明になりやすい
- 紛失・記入漏れ・改ざんのリスク
- 業務の属人化・引継ぎの非効率
例えば、書類の記入漏れを見つけるたびに、従業員に電話・メールで確認、返却して、再提出してもらうことが必要です。
事業所が離れていれば、郵送に時間とコストがかかりますし、かといって人事担当者が代筆をするというのも手間がかかるところでしょう。
こうした手間のかかっている作業を減らしたい、無くしたいと感じている方は、是非このままコラムをご覧ください。
ここから始める!ペーパーレスにしやすい業務
ペーパーレス化は、「すぐできること」から始めるのがポイントです。
以下の業務は特に効果が高く、取り組みやすい分野です。
① 住所変更・氏名変更などの身上異動届
Webフォームやクラウドシステムで、社員が直接申請。証明書のPDF添付も可能に。
② 年休・特別休暇の申請
勤怠システムと連動した申請・承認フローの導入で、リアルタイム管理が可能。
③ 雇用契約書の電子化
電子契約サービスを活用して、署名・保管もすべてクラウドで完結。
④ 評価シートの電子運用
ExcelやGoogleフォームなどでも開始可能。段階的にクラウド人事システムへ移行。
ペーパーレス×業務設計=業務改革のチャンス
システム導入は、単なるペーパーレス化ではなく、業務そのものの見直し・最適化の機会でもあります。
- 「この申請、そもそも必要?」
- 「承認者が3人もいるのはなぜ?」
- 「紙に印鑑をもらう意味はある?」
こうした問いをきっかけに、業務フローを見直すことこそが真の効率化。そしてその支援をしてくれるのが、適切なHRシステムです。
ペーパーレス化を支えるITツール
― 総合人事管理システム(HRシステム)の選び方と注意点 ―
ペーパーレス化を進めるにあたって、業務ごとに専用ツールを導入する方法もありますが、将来的な管理の煩雑さやデータの二重登録を避けるためには、「総合人事管理システム(HRシステム)」の導入が有効です。
こうしたシステムは、人事業務全体を一つのプラットフォームで一元管理でき、業務の効率化や正確性の向上につながります。
総合人事管理システムとは?
総合人事管理システム(HRシステム)は、以下のような人事業務をワンストップで管理できるクラウドサービスです。
これらを一つの画面・一つのアカウントで管理できるため、業務の分断や属人化を防ぐことができます。
- 人事情報
-
従業員のプロフィール、職歴、資格、緊急連絡先など
- 勤怠管理
-
出退勤記録、シフト管理、時間外労働管理など
- 給与・賞与
-
給与計算、明細配信、社会保険料計算など
- 休暇管理
-
年休・特別休暇申請、残日数管理、承認フロー
- 雇用契約
-
電子契約書作成・署名・保管
- 評価・目標管理
-
評価シート運用、目標設定、フィードバック記録
- 各種届出
-
身上異動、通勤経路、扶養変更、申請ワークフローなど
おすすめの総合人事管理システム
以下は、日本国内で導入実績が多く、使いやすいと評価されている代表的なHRシステムです。
SmartHR(スマートHR)
【特徴】直感的なUIで、新人でも操作しやすい。社会保険の電子申請にも強い。
【主な機能】人事情報管理、年末調整、雇用契約、申請ワークフロー、労務コンプラ対応
【連携】KING OF TIME、freeeなど多数の外部システムとAPI連携可
マネーフォワード
【特徴】会計・勤怠・給与など、マネーフォワード製品と連携して「業務の流れ全体」を管理可能
【主な機能】人事台帳、雇用契約、給与計算、年末調整、勤怠との連携
【連携】マネーフォワードクラウド会計・勤怠などとシームレスに連動
ジョブカン
【特徴】コストパフォーマンスに優れ、中小企業でも導入しやすい
【主な機能】労務管理、入社手続き、帳票自動作成、マイナンバー管理
【連携】ジョブカン勤怠・給与・ワークフローと統合運用可
社労士との連携も意識した、総合人事管理システムの選び方
さらに最近では、社会保険労務士との連携が可能なシステムを選ぶことで、手続きの外注や専門家との情報共有もスムーズになります。
オフィスステーション
(株式会社エフアンドエム)
【特徴】社労士事務所との共同開発。社労士との連携機能が非常に強力
【主な機能】雇用契約、入退社手続き、電子申請、各種帳票作成・送信
顧問社労士と共有IDで運用でき、手続き進捗やデータをスムーズに共有。電子申請の社労士代行にも完全対応
外部委託(アウトソーシング)を活用したい企業に最適です。
ツールが多すぎるとどうなる?「システム疲れ」に注意
人事担当者が陥りがちなのが、機能ごとにバラバラなシステムを導入してしまうケースです。
人事担当者の作業は、人事情報登録、出勤・退勤打刻処理、勤怠管理、採用管理、雇用契約書(労働条件通知書)作成など多岐にわたります。
そのため、人事に関するシステムは数多く存在し、それぞれ強みをもっているため、どれも輝いて見えるはずです。
しかしながら、計画なくシステムを導入すると・・・
- 同じ社員情報を複数システムに登録(入力ミスや更新漏れが発生)
- システムごとにIDやパスワード管理が必要
- 承認フローが分断され、確認作業が煩雑に
- CSVでの手動連携に時間と労力がかかる
これでは、ペーパーレス化が逆に業務負担の増加につながることも。最初の導入時から、「連携・一元管理できるかどうか」を重視しましょう。
導入を成功させる3つのポイントと求められる資質
小さく始めて、成果を見せる
まずは1種類の届出だけでもペーパーレス化を。
人事担当者にとっても、従業員にとっても、はじめは手探りです。
入力項目が少ない、対象とする従業員が限られている、でも毎月定期的に申請が必要など、導入のハードルが低いところから着手しましょう。
成功事例をつくること、一歩でも進んだという達成感を感じること、他部門へ共有することを忘れずに。
現場の声を拾い、説明を丁寧に
「手間が増える」「使い方が不安」などの声に真摯に対応しましょう。
システム業者からマニュアルも大事ですが、自社オリジナルのマニュアルも整備しましょう。
各部署の所属長や主要メンバーに対する研修も、利用拡大には効果的。
社内ルール・就業規則の見直し
書面提出を義務付けている社内ルールがある場合は、規程変更が必要です。
組織には一定数の反対派・改革に消極的な方もいます。
既存の規程を盾にして、「規程に書いてないからやれない」「様式が決まっている」など“やらない理由を並べる”方もいますので、
ルールの見直しも同時並行で進めましょう。
人を動かすチカラ
人事担当者には、人を動かすチカラが求めれると思います。
人事部門で困っていることはないか、ペーパーレス化できる業務はないか、それぞれの担当者に話を聞くこと(=営業)から始まります。
一緒に考えて解決の糸口を見つける、実際にシステムを使ってペーパーレス化に取り組んでもらうために、
人に動いてもらうためにどうするべきかを考えられることが非常に大事な資質となります。
~小さな改革が大きな成果に~
ペーパーレス化は、「紙をやめること」がゴールではなく、「働きやすく、ミスが減り、属人化しない仕組み」をつくることです。
ツールはあくまで手段。大事なのは、人事部門が「変わる勇気」を持ち、改善に踏み出すことです。
まずはひとつの書類、ひとつの申請から。あなたの手で、人事の未来をもっとスマートにしていきましょう。
社会保険労務士事務所ベイプラスでは、システム導入支援や働き方を改革のサポートをおこなっています。
第一歩を踏み出せず悩んでいる方は、是非お問い合わせください。