【2026年法改正情報】相次ぐ法改正を「コスト増」で終わらせない労務戦略とは
「また社会保険料が上がるのか……」 「これ以上、何を公表し、何に対応すればいいのか」
2026年(令和8年)、日本の企業はかつてない労務環境の激変期を迎えます。
「子ども・子育て支援金」による実質的な社会保険料の負担増、障害者法定雇用率の2.7%への引き上げ、さらには男女間賃金差異の公表義務の拡大など、キーワードは「負担の増大」と「透明性の追求」です。
これらの変化は、一見すると経営を圧迫する「負の側面」ばかりが目につきますが、これらの施策は「これまでの曖昧な労務管理を清算し、選ばれる組織へ生まれ変わるためのラストチャンス」でもあります。
今回は、2026年の主要な法改正のポイントと、経営者が今すぐ着手すべき実務対応について解説します。
1. 「子ども・子育て支援金」:実質的な人件費アップへの備え
2026年4月から、いよいよ「子ども・子育て支援金」の徴収が始まります。これは医療保険料と併せて徴収されるため、企業にとっては実質的な社会保険料負担の増加を意味します。
「手取り額を減らしたくない」という職員の不満と、「増大する法定福利費」という経営の板挟みになることが予想されます。単に「法律だから仕方ない」と説明するだけでは、職員のエンゲージメントは低下する一方です。これを機に、現在の給与体系が「成果」や「役割」に対して適正であるか、抜本的に見直す時期に来ています。
実務においては、給与計算システムの設定変更や社会保険料控除額項目の見直し、従業員からの問い合わせ対応の準備といった対応が求められます。
「なんか手取りが減った!」と従業員から問い合わせ来る前に、周知しましょう。給与明細書にコメントを入れるのも効果的です。

💡子ども・子育て支援金制度についてはこちらの資料もご覧ください
2. 「男女間賃金差異」の公表拡大:言い訳ができない時代の到来
これまで従業員301人以上の企業に課せられていた「男女の賃金差異」の公表義務が、101人以上の企業まで拡大されます。これは、単に数字を出すだけのことではありません。
「なぜ差があるのか?」を職員や求職者、そして社会から問われることになります。 「男性の方が残業が多いから」「女性は管理職が少ないから」といった従来の理由を放置し続けることは、今後は「採用力の低下」や「離職の増加」に直結する大きな経営リスクとなります。
医療機関においては、職種別の集計結果も把握しておく
特に病院においては、職種別に男女の構成比、管理職の男女比も大きくことなります。女性医師が増えているとはいえ、管理職は男性ばかりということが見受けられます。看護部においては、圧倒的に女性が多いですし、師長クラスに男性がいないことも珍しくありません。薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、それぞれ男女の特徴がある職種と思われます。
こうしたデータは採用活動においても非常に重要です。「病院全体」のデータよりも、「職種別」「部署別」のデータを重視するのは必然であり、求職者にもオープンな姿勢を見せることができます。
💡過去5~10年間の結果を時系列で把握してみるのもいいでしょう。突然数値が改善した、もしくは改悪したなど、「なんとなく増えたな」とあいまいな職場環境が「見える化」されます。
3. 「障害者雇用率 2.7%」:義務から「戦力」への転換
2026年7月、法定雇用率が2.7%へと引き上げられます。2024年に引き上げられたばかりですが、さらに引き上げとなります。
障害雇用は待ったなしです。
対象となる企業(従業員37.5人以上)にとって、採用のハードルはさらに高まります。 「どこかに適当な仕事はないか」と探す従来のスタイルでは、早晩行き詰まります。ICT機器を活用した業務効率化(前回のコラムで触れた補助金事業など)とセットで、「誰でも活躍できる業務フロー」を再構築できるかが、納付金リスクを回避するカギとなります。
また、2025年4月より除外率の引き下げがありました。障害者雇用が困難な業種に対して一定の減免措置と考えていいですが、医療業については30%→20%に引き下げられ、これにより雇用すべき障害者の人数が増えることなります。
毎年ゴールデンウイーク明けには、前年度の障害者雇用納付金に関する報告書を提出する必要があります。事前説明会への参加や提出準備を進めている事業所、人事担当者もいらっしゃると思います。変更点にご注意ください。


4. 働き続ける高齢者への追い風:「在職老齢年金」の緩和
一方で、高齢者の就労意欲を高める改正も行われます。
在職老齢年金の支給停止基準額が緩和されることで、「年金が減るから働く時間を抑える」という制限が緩くなります。
人手不足が深刻な医療・介護業界において、ベテラン層の知見をフルに活用できる体制(再雇用制度や賃金設計)を整えることは、即効性のある人材対策となります。
実務的に大きな影響はありませんが、「この給与水準なら年金はどうなるのか」「働き方を変えたら支給停止になるのか」といった質問に対し、改正前の知識のまま回答してしまうと、トラブルに発展する恐れがあります。

法改正をビジネスチャンスに変える「組織の健康診断」を
2026年の法改正は、いわば国による「組織の健康診断」の強制実施です。 「あいまいで不透明な管理」を出し切り、筋肉質な組織へと作り変えることができる企業だけが、これからの人手不足時代を生き残ることができます。
社会保険労務士事務所ベイプラスでは、改正内容の解説はもちろん、「貴院の現状でどの程度のコスト増が見込まれるか」「将来の紛争リスクをどう摘み取るか」というシミュレーションから伴走いたします。
制度が変わる直前に慌てるのではなく、今から戦略的な一手を打っていきましょう。
治療と仕事の両立支援(事業主の努力義務化)
治療と仕事の両立支援についても2026年4月の法改正となります。別途情報発信をさせていただく予定です。何卒ご容赦ください。

