【今年こそ紙から脱却したい】社労士と考える最大8,000万円の業務改善補助金の使い道
【最大8,000万円】「ICT導入で業務効率化」の補助金が登場!
社労士が読み解く「機械任せ」では失敗する理由
「看護師の記録業務を減らしたい」、「薬剤部の待ち時間を短縮したい」、「事務部門の残業を減らして、コストを削減したい」
そんな課題をお持ちの病院経営者様に、見逃せない情報が入ってきました。 厚生労働省より、「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」の実施要綱が公表されました。
これは、AI問診や自動搬送ロボット、勤怠管理システムなどの「ICT機器」を導入する病院に対し、最大8,000万円(補助率4/5)という巨額の支援を行うものです。
一見すると「最新機器を安く導入できるチャンス!」と思えますが、実施要綱を詳しく読み解くと、国が求めているのは「モノの導入」ではなく、「人の働き方の変革」であることが見えてきます。
まずは事業概要について
| 事業の名称 | 令和8年度 医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業 |
| 事業の目的 | 本事業は、ICT機器等の導入によって業務効率化・職場環境改善に資する取組を行い、生産性向上を図る医療機関に対して必要な経費を支援することで、効率的で質の高い医療提供体制の構築を図ることを目的とする。 |
| 対象となる病院 | ・令和8年4月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている病院 ・都道府県において、対象病院が、都道府県医療計画の5疾病6事業や在宅医療を提供するなど、地域医療に一定の貢献をしていることや、対象病院が、地域医療構想調整会議に参加し、病床の機能分化・連携、再編・統合を進める地域医療構想の推進に協力しており、当該病院の補助対象の取組がそうした地域医療構想に沿ったものであることが確認されていること。 |
| 補助額・補助率 | 令和8年度中に生じる業務効率化に必要な経費の5分の4を上限に補助する。 なお、1施設あたりの補助上限額は 80,000 千円とする。 |
| 補助対象 | ・業務効率化に資するICT機器等の導入及びそれに附随する費用が対象である。 ・ICT機器等には、職員間の情報共有のためのスマートフォンや業務用インカム等。生成AIを活用した各種業務支援サービスや薬剤・検体搬送ロボット、マセレーター、薬剤自動分包機等も対象となる。 ・その他、医事部門・給食部門・清掃部門等の職員の業務効率化に資するICT機器等も対象となる。 ・附随する費用としては、設置費用、訓練費用、効果測定費用、関連設備の改修費用(Wi-Fi 環境整備費用や電子カルテ等のシステム連携費用を含む。)等は対象となる。 ・ICT機器等にはソフトウェアやサービスも含まれ、利用料等の支払いがなければ運用できない場合は、令和8年度中に生じる利用料等も対象となる。 |
| 補助要件① | 「業務効率化計画」の作成 以下の内容が盛り込まれた最大3年間を対象とする「業務効率化計画」を作成し、各年における具体的な取組内容を記載すること。 ①組織: 院長、副院長等の管理者が委員長となる「業務効率化推進委員会」を設け、経営者層が業務効率化のPDCAを主導して進めること。PDCAについては、特に評価と見直しの仕組みを必ず設けること。 ②対象部門: 「医師部門」「調剤部門」「看護部門」「その他コメディカル部門」「事務部門」「その他のバックアップ部門」のいずれか又は全てが含まれていること。 ③具体的かつ定量的な効率化目標: それぞれの病院の実情に応じた具体的な目標であって、対前年同月比●%以上など、定量的に測定及び評価できるものを設定する。 ④業務手順の見直し、タスク・シフト/シェアに関する具体的内容: 上記目標を達成するため、業務手順の見直しやタスク・シフト/シェアをどのように行うのか、具体的に設定すること。特に機器等を導入する場合は、最大限の効果を発揮できるよう、必要に応じて業務手順を見直すこと。 ⑤ランニングコストの確保に関する内容: ICT機器等の運用・保守費用等のランニングコストは補助対象外であり、当該ランニングコストは業務効率化によって賄われるべきであることから、その確保に関する具体的方針を記載すること。 |
| 補助要件② | 厚生労働大臣への報告 上記計画の進捗を国においても確認するため、1年目の計画終了時、2・3年目の計画途中及び3年目の計画終了時に、厚生労働大臣が別途定めるところにより、都道府県知事を通じて厚生労働大臣に報告書を提出し、その評価を受けること。 |
| 補助要件③ | 厚生労働大臣が別途定める業務効率化に関するデータの提出 上記②とは別に、厚生労働大臣が別途定めるデータの提出に応じること。 |
注意点は以下の通りです(厚生労働省ホームページより)
※本事業は令和8年度に実施いたします。
※本事業の対象は保険医療機関コードが発行されており、令和8年4月1日から申請時点までに診療報酬請求の実績がある病院となります。
※応募を検討する病院は実施要綱の内容をよく確認いただき、都道府県からのご案内をお待ちください。
※本事業の詳細や申請方法については、このページまたは都道府県HPをご確認ください。
「現場の意識が低いから無理…」と諦める前に。
「システムを入れたからって、すぐに人を減らせるわけじゃないし…」 「そもそも現場のスタッフに『効率化しよう』なんて意識はないよ」 「新しいアイデアを出せと言っても、誰も何も言ってこない」
おっしゃることは痛いほど分かります。日々の業務に追われる医療現場において、「自発的に知恵を出し合って、効率化して、残業を減らす」というのは、理想論に過ぎないことが多いのが現実です。
しかし、この補助金の要綱を深く読み解くと、「意識の高い現場」でなくても、「人員削減」をしなくても、十分にクリアできる目標設定の正攻法があることが分かります。
現場の負担にならず、かつ国の審査もパスする「現実的な目標設定」の3つの視点をお伝えします。
1. 「人減らし」ではなく「質の転換」を目標にする
「システム導入=人員削減」と考えると、現場は猛反発しますし、実際にすぐ人を減らすのは不可能です。
そこで、目標を「削減」から「シフト(転換)」に置き換えます。
厚生労働省の例示にもある通り、以下のような目標設定が認められています。
- × 悪い目標: 「事務員を1名削減する」
- ○ 良い目標(質の転換):
- 「看護師の記録時間を1日30分削減し、その分を患者のベッドサイドケア(訪室回数)に充てる」
- 「医師の事務作業をAIに任せ、患者への病状説明時間を1件あたり5分増やす」
- 「リハビリ職の記録時間を削減し、入院後の早期リハ介入率を〇%アップさせる」
これなら、現場は「仕事を奪われる」のではなく「本来やりたかった看護や医療に集中できる」と感じるため、協力を得やすくなります。
2. 「意識」を変えるのではなく、「勝手に減る時間」を計測する
「現場に効率化の意識がない」というお悩みに対しては、「意識しなくても勝手に時間が減るプロセス」だけを目標にします。
例えば、「みんなで協力して早く帰ろう」という精神論の目標(残業時間削減など)は、現場の意識に依存するため失敗します。
しかし、以下のような「物理的な作業時間の短縮」であれば、スタッフのやる気に関係なく達成可能です。
- 自動精算機の導入:「会計待ち時間」と「事務員のレジ締め作業時間」は、機械が入れば物理的に必ず減ります。
- AI問診の導入:患者さんが入力したデータがカルテに自動反映されれば、「医師のカルテ入力時間」はキーボードを叩く物理量が減るため、必ず削減されます。
「残業ゼロ」という大きな目標ではなく、「〇〇作業の時間を月20時間減らす」という“機械任せで達成できる局所的な目標”を積み上げることが、採択への近道です。
3. アイデアは「外」から持ってくる
「現場からアイデアが出てこない」のは当然です。彼らは医療のプロですが、業務改善のプロではありません。
そこで無理に現場会議を開くよりも、「他院の成功事例」をそのまま自院に当てはめる「選択方式」をお勧めしています。
今回の要綱には、実は「答え(目標の例)」がすべて書いてあります 。
- 文書作成時間の削減
- 夜勤帯の患者訪室頻度の減
- 薬剤師の医薬品情報業務時間の減
これらの中から、「ウチでも導入できそうな機器」とセットになっている項目を選び、「これと同じことをやります」と宣言するだけで良いのです。 ゼロから知恵を絞る必要はありません。使える型は徹底的に使いましょう。
勤怠管理システムももちろん対象
一つひとつの作業時間の積み重ねが労働時間です。作業の削減はすべて労働時間に反映されます。
そんな労働時間を適切に把握できていなければ、スタートもゴールも見えてきません。

補助金の「目的」と、現場の「実態」の橋渡しを
今回の業務効率化支援事業は、単なる設備投資の補助ではありません。その根底にあるのは、医療現場の過酷な労働環境を改善し、健全な「働き方改革」を推進するという、極めて公共性の高い目的です。
しかし、現場の実態として「新しい取り組みへの抵抗感」や「改善のノウハウ不足」があるのもまた事実です。ここで、単に申請を通すためだけの「体裁を整えた計画書」を作っても、後々の実績報告や、何より実際の現場運営において、歪みが生じることになります。
社会保険労務士事務所ベイプラスの役割は、以下の3点に集約されます。
- 実態の棚卸しと適正な言語化
現場が自覚していない「隠れた非効率」を専門家の目で発見し、それを要綱が求める「業務効率化」の指標として正しく翻訳・整理します。 - 法的な持続性の担保
補助金を受けて導入したシステムが、労働時間管理や36協定、各種規程と矛盾しないよう、法的な整合性を確保します。 - リスク管理としての伴走
達成不可能な目標を掲げるのではなく、3年後に「やってよかった」と言える、現実的かつ誠実な計画立案を支援し、将来的な返還リスクや労務トラブルから病院を守ります。
「貰って終わり」ではなく、病院の永続的な発展と職員の福祉を最優先に考え、法的な根拠に基づいた「実のある改善」を共に進めてまいります。
お気軽にお問い合わせください。

