「“穴埋め”意識」は危険! スポットワーク急増時代に、企業が持つべき労務管理の視点

人手不足が深刻化する中、「タイミー」や「シェアフル」に代表される「スポットワーク(単発・短期のギグワーク)」を活用する企業が急速に増えています。

必要な時に必要なだけ労働力を確保できるため、企業にとって非常に便利な仕組みです。 しかし、多くの企業がこの新しい働き方を、従来の「アルバイト」や「パート」と同じ感覚で、単なる「人手の穴埋め」として捉えていないでしょうか

実は、その「意識」こそが、将来の採用活動や企業の評判に関わる、大きな経営リスクとなり得ます。
本日は、社会保険労務士の視点から、スポットワーク活用において企業が今すぐ見直すべき「労務管理の意識」について解説します

ズレていませんか? 企業と働き手の「意識のギャップ」

従来の日本型雇用は、長期雇用を前提とした「メンバーシップ型」でした。会社に「所属」し、会社は従業員を教育し、従業員は会社に忠誠を尽くす、という関係性です。

一方、スポットワークは「ジョブ型(タスク型)」の最たるものです

働き手側:「所属」ではなく「個」として、自分のスキルや時間を「商品」として提供する意識。
企業側:「特定の作業(ジョブ)」を「購入」する意識。

問題は、企業側がこの「ジョブ型」の意識を徹底できず、「従来のメンバーシップ型(ウチの従業員)」の意識を引きずったまま対応してしまうことです。
「短時間でも、ウチのやり方に合わせてもっと主体的に動いてほしい」 「単発なのだから、最低限の指示で動いてほしい」 こうした意識のギャップが、現場でのトラブルや不満の温床となります。

「穴埋め」意識がもたらす3つの経営リスク

スポットワーカーを「使い捨ての労働力」「穴埋め」と捉える意識は、以下の3つの具体的なリスクに直結します。

① 採用リスク(将来の応募者が減る)

スポットワーカーは、「将来の正社員・パート従業員」の候補者でもあります。
たった数時間の労働であっても、そこで「雑に扱われた」「指示が不明確で困った」「職場の雰囲気が悪かった」という「悪い労働体験」をすれば、その人は二度と貴社で働こうとは思わないでしょう。

② 評判リスク

彼らは「労働者」であると同時に、貴社のサービスや職場を評価する「レビュアー」です。
スポットワークのアプリ上での評価はもちろん、SNSや口コミサイトに「あの会社は働きにくい」というネガティブな情報を発信する可能性があります。その「悪い評判」は、スポットワークだけでなく、正社員採用など全方位の採用活動に悪影響を及ぼします。

③ 安全配慮義務違反のリスク

最も注意すべき法的リスクです。
「単発だから」「短時間だから」と、安全衛生教育や作業指示を怠れば、労働災害(労災)が発生するリスクが高まります。雇用契約である以上、たとえ1時間の労働であっても、企業は労働者に対する「安全配慮義務」を負っています
万が一事故が起きた場合、企業の管理責任が厳しく問われます。

今すぐ実践すべき「スポットワーカー」の労務管理

スポットワークは「人手の穴埋め」ではありません。自社の職場を体験してもらう「(短時間の)パートナー」です。

以下の3点を整備するだけで、「悪い労働体験」を防ぎ、「良い関係性」を築くことができます。

①「作業指示書(マニュアル)」の整備

「見て覚えろ」は通用しません。スポットワーカーが、誰に指示を仰ぐ必要もなく、一人で作業を完結できるレベルの「明確な作業指示書(マニュアル)」を準備してください。 「何時から何時まで、具体的に何をするのか」を明文化することが、お互いのギャップを埋める第一歩です。

②「安全衛生」に関する最低限のルールの徹底

「ここだけは触ってはいけない」「この場所は滑りやすい」といった、業務に関わる最低限の安全ルールは、作業開始前に必ず伝達してください。これは企業の法的義務です。

③「尊重」するコミュニケーション

現場の社員が、スポットワーカーを「部外者」「格下の労働力」として扱うような態度は厳禁です。
「本日(短時間)のパートナー」として尊重し、「ありがとうございます」「助かります」といった基本的なコミュニケーションを徹底するよう、現場の意識改革も必要です。

「所属」から「個」の時代へ

スポットワークの普及により、働き方は「所属」から「個」の時代へと大きくシフトしています。 「たった数時間の労働力」として扱うか、「自社のファンになってくれるかもしれない“個”」として接するか。その意識の違いが、数年後の人材採用力、ひいては企業の存続に直結します。

スポットワーカーの活用方法や、多様化する働き方に対応した労務管理体制の整備でお悩みの際は、社会保険労務士事務所ベイプラスにご相談ください。

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