「なぜ、あの社員は辞めてしまうのか?」—今すぐ見直すべき評価基準と面談の技術

人材定着の鍵は『評価の納得感』

中小企業の経営者様から「給与を上げているのに、なぜか人が定着しない」というご相談を受けることがあります。もちろん待遇は重要ですが、従業員が会社を去る本当の理由は、別のところにあるかもしれません。

それは、「自分が会社から“正当に評価されていない”」と感じることです。

「評価の納得感」が得られない職場では、従業員はやりがいを失い、静かに離職していきます。複雑な賃金制度の改定(お金)の前に、まず取り組むべき「評価制度の運用(納得感の醸成)」について、2つのステップで解説します。

「評価のズレ」が不信感を生む

人材流出のシグナルは、「評価基準の曖昧さ」と「フィードバックの欠如」に現れます。

ケース1 評価基準が「曖昧」

「リーダーシップを発揮した」「主体的に行動した」といった抽象的な言葉だけで評価していないでしょうか?
経営者や上司の「感覚」による評価は、従業員にとっては「何を頑張れば評価されるのか分からない」状態を生み出します。

ケース2 フィードバックが「一方的」

年に一度、評価シート(結果)だけを渡し、「今期はB評価だった」と伝えるだけで終わっていないでしょうか?
なぜその評価になったのか、どこが評価され、何が課題なのか。その「対話」がない評価は、従業員にとって「ブラックボックス」でしかありません。

この「評価のズレ」こそが、「どうせ頑張っても見てもらえない」という不信感となり、離職の引き金となります。

人材定着の第一歩~「評価基準」の明確化

「納得感」を生む最初のステップは、評価基準の「見える化」です。 これは、立派な評価シートを作ることではありません。「会社(上司)が、従業員に何を期待しているか」を具体的な言葉で共有することです。

・NG例(曖昧)

「リーダーシップを発揮する」

・OK例(具体的):

「後輩のAさんに、B業務の手順を指導できる」

「Cプロジェクトの進捗を管理し、週1回報告できる」

このように基準を具体化するだけで、従業員は「何をすれば評価されるのか」という“行動の地図”を手に入れることができます。

「評価の納得感」を生むフィードバック面談

制度や基準(仕組み)以上に重要なのが、上司と部下の「対話」=フィードバック面談です。
この「運用」こそが、人材定着の心臓部です。

評価面談は、「評価結果(査定)を伝える場」ではなく、「成長を支援し、期待を伝える場」です。

面談のポイント

▶承認(できていること)
 まず、今期達成できたこと、成長した点を具体的に認め、伝えます。(評価されている実感)

▶理由の説明
 評価結果(S, A, Bなど)について、上記の「具体的な基準」に基づき、なぜその評価になったのかを客観的に説明します。

▶期待(できていないこと)
 課題や、来期に向けて期待することを具体的に伝えます。

▶傾聴
 従業員本人の自己評価や、業務上の悩み、キャリアの希望などをしっかり聴き取ります。

たとえ評価結果が本人の期待通りでなかったとしても、上司が自分の仕事を見て、真剣にフィードバックしてくれたという「プロセス」そのものが、「自分はちゃんと見てもらえている」という納得感と安心感を醸成します。

面談を定例の儀式にしない

「人材の定着」は、高額な報酬や立派な福利厚生だけで実現できるものではありません。
従業員が日々感じている「自分の働きぶりは、この会社(上司)に正当に評価されている」という“実感”こそが、エンゲージメントの源泉です。

「評価基準が曖昧なまま、上司の感覚頼みになっている」 「評価面談が、ただ評価シートを渡すだけの“儀式”になっている」

もし、これらに心当たりがあれば、それが貴重な人材が流出している真の原因かもしれません。

当事務所では、就業規則の整備だけでなく、「社員の納得感を高める」評価制度の運用や、管理職向けの面談研修(フィードバック研修)についてもサポートしています。人材の定着にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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